今にして思えば遠い20世紀の過去の話ですが、ふと俺の本棚にあった詩集を見かけたうちのオフクロが漏らした話を年末に思い出しました。母親は義理の兄に紹介された男性とのデートの時にいいとこ見せようとして詩集を持参して「好きなのは島崎藤村なんです」って言ってみたんだけど、完全理系男子の相手(俺のオヤジ)は何の反応も示さず、メチャ恥ずかしかったらしいです。(「だからおまえの「文学青年」作戦はお見通しなのよ」というオフクロの真意までは当時の俺は気づきもせず…。)
ということで、船橋最強の読書コラム第11弾は茨城のり子「わたしが一番きれいだったとき」。小説とか読むのは結構時間が掛かるじゃないですか。オフクロみたいに(いや、俺もそうか)なんか軽く「文学趣味」を見せたいなって時は人生どこかであるかもしれなくて…。そんな時は詩集ですよ。今となっては島崎藤村は文語体で古めかしい、ヴェルレーヌとかは理系じゃなくても意味が通じないかもしれないし。そんな時は茨木のり子だと思うんです。いやいや、そうじゃなくて。生きていてどうにもつらくなった時、「ちょっと待て、おらー!」と意味不明にキレそうになった時、読んでみたらいいっすよ。小説と違ってすぐ読めちゃうし。表題の「わたしが一番…」は時代を謳ってて少し重いけど、「自分の感受性くらい」とか性別問わず基礎教養として読んでいた方がいいと思うんです。