いつの時代も総理大臣というのは大変なものだと思います。ということで、船橋最強の読書コラム第七弾は沢木耕太郎「危機の宰相」です。

 1964年、がんに侵された総理大臣・池田勇人は内閣を総辞職、その翌年に世を去ります。1960年に政権を獲った彼がまさしく命を懸けて取り組んだ「所得倍増計画」は10年の予定を僅か4年で実現、その後、日本は経済大国に駆け上がり、そして…。

 今は無き旧大蔵省での出世競争で敗者となった3人の男たちが不器用にもがきながら、同じく敗者となった日本という国を復活させるために戦う姿を若き日の沢木耕太郎が追います。敗者の一人・天才的な経済学者である下村治が「計算尺」という謎の道具を操って鮮やかな長期予測を披露するシーンはなかなか格好いいです。池田が失意の中で病気療養するのは私の故郷である広島県三原市なので満更他人でもないような…。(いや、他人ですけど。)三人目の敗者・田村敏雄が作り上げたのが、岸田首相の派閥「宏池会」です。「所得倍増」の文字は岸田さんの頭にも浮かんでいるのかなあ?

 

 

<<前の日記  次の日記>>