今は「嵐の季節」なんでしょうか?

 ということで船橋最強の読書コラム第五弾はサン=テグジュペリ「夜間飛行」です。

新潮文庫の表紙は宮崎駿のイラスト。(本屋の外国文学の棚にはあると思うので一度見てください。)この二枚羽根の飛行機は戦闘機ではありません。第一次大戦後の南米で郵便を運んでいました。スピードに勝る飛行機も夜の間に船や列車に追いつかれてしまいます。主人公たちは危険な夜間飛行に挑戦します。冷徹な管理者リヴィエールは社内外の反対者を押し切って、アルゼンチンのブエノスアイレスを拠点とした広大な郵便網を拡大していきます。(これは作者の体験に基づいたほとんどノンフィクションの物語だそうです。)

彼らの前に立ちはだかるのは巨大な嵐と高峻なアンデス山脈。嵐の中で方向を見失った飛行士は高度を上げ続け雲を抜けて満天の星の中に飛び込みます。待っているのは生還か死か。「一機の郵便機が、どこか、その夜の深みの中で危険に瀕している。機上では、人間が無力のままあがいている。」(この場面はアニメ「紅の豚」の一シーンに繋がっているとか。)

現実の中で、ふとぼくらも嵐の夜を飛ぶ無力な飛行士なのかと感じることがあります。でもこの小説には孤独は出て来ません。辛い関係ではあっても人と人とは繋がっています。そう言う意味では同じ作者の「星の王子様」の方が痛切に悲しい話なんじゃないかと思ってます。

 

 

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